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申し訳なさ気に歪んだ瞳で花子を見据え、伸ばされたその手は花子の頬を撫でた。
少しくすぐったくて、片目をすがめる。
「お前のヘタレは今に始まったことじゃないからな」
「……不甲斐ないです」
空では星が瞬き、静まり返った校舎の中、光りが灯るのはこの生物室のみ。
広い部屋でぽつんと二人は、口を閉ざす。
続く沈黙と、いつまでも膝の上に頭を乗せている武蔵に、花子は次第に居心地が悪くなってくる。
(あたし、オタクに何してんだろ)
そうだ、密着しすぎだ。
「花ちゃん」
唐突に破られた静寂に、はっとする。
「ん?」
小首を傾いで顔を覗けば、武蔵は大きな目をすっと細めて微笑んだ。
「花ちゃん」
「どうしたの?」
「…これ気持ちいい」
そう言って指すのは、武蔵の髪に触れていた花子の右手。
思わず顔を赤くした花子は、目を見張り勢いよく手を離す。
「な、て、ってか早くどいてよ!」
「えーっ、もーちょっと~」
「馬鹿言うな!オタクがっ!」
「オタクは関係ないよ…」
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