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しょうがないな…などとぶつぶつ言いながらも、武蔵は渋々と花子の言うとおり体を起こす。
ただ、その代わりのように膝から離れた温もりが、今度はふわりと肩に落ちてきた。
向き合う形で、頭だけ花子に預ける武蔵から、ふわりとシャンプーの香がかおる。
オタクのくせに、清潔感漂わせやがって。
和馬は風呂は週一だぞ。
「花ちゃんの匂いがする…」
「へっ?」
「香水付けてます?」
「いや、臭いのは嫌いだから、何もしてないけど…」
「じゃあ、家の匂いなんですね。僕は甘くて好きですよ」
顔を上げた武蔵の頬に、えくぼがひょっこり顔をだす。
笑顔だけはいつもキュートだと、花子は苦々しい表情を浮かべる。
少し、心が揺れるのだ。
「ふふ、顔赤いですよ」
「ばっ、嘘つけ!」
「照れなくていいんですよ?」
「殴るぞ」
「すみません」
ようやく口を閉ざした武蔵。
ただし思いきり唇を尖らせてかなり腑に落ちない様子だ。
数㎝の距離を保って向かい合う二人。
熱くなった頬を両手で押さえて、ため息をつきながら壁に背を預ける。
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