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「いえ、僕はあまりお腹は空いてませんから」
笑いながら肩をすくめる武蔵は、決してカレーパンがあまりにイビツで信用が無いからそう言っているのではなく、花子のために遠慮をしているように見えた。
「……」
(なんか、武蔵に気を使われるのは、しゃくに触る)
ブスッとした花子は、眉間にこれでもかと言うくらいシワを寄せて、睨むように武蔵を見遣った。
後にイライラが爆発したかのように乱暴に袋を破くと、取り出した元カレーパンを適当にちぎり、武蔵へ押し付ける。
"適当に"というのがポイントで、その大きさは明らかに半分ではなく武蔵のがデカイのだ。
突然の行動に武蔵は、驚いたように花子とパンを交互に見合わせた。
「え?」
「食べろよ」
「で、でも…」
「あたしは!」
ぐずる武蔵に花子は視線を泳がせながら、恥ずかしげに呟く。
「あたしは、男はちょっとガッシリしたくらいが好き…だが?」
「!」
何やってるんだと、火を吹きそうになる。
だが、武蔵にはこれが効くと思ったのだ。
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