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そう言って苦笑を浮かべ、僅かに肩をすくめる。
その素直な仕草に、きゅんと胸が締め付けられる。
「武蔵…」
「はい?」
「お前はあたしより大人なわけじゃない。大人の余裕があるわけないだろう?」
「え?……あ、そっか」
とぼけたその反応に、肩透かしを喰らった気分で、花子は苦笑を浮かべる。
「武蔵は本当、馬鹿だよなぁ」
「まあ、ヘタレと言われるよりは、馬鹿がいいですけど」
「いや、ヘタレには変わりない。そしてオタクだ」
苦虫を噛んだような顔をする武蔵に、いつの間にかふっと、笑みが零れていた。
「マヌケだな」
「……」
「…?」
いつもならむくれる武蔵が、口を閉ざしてこちらをじっと見つめている。
冗談のつもりだったのだが、気に障ったのだろうか。
「どうしたの?急に押し黙って」
「…いや、やっぱ花ちゃんの笑顔、好きだなって」
やっぱり武蔵は武蔵だ。
花子は呆れたように肩をすくめて、ついと壁の時計を仰いだ。
「9時…か。どうする?」
「勉強しま…」
「トランプしよう!!」
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