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する事が無い僕は、ただ彼女の横顔を見ていた。いや、見取れていた。昨日は暗くてよく見えなかったが、彼女はかなりの美人だ。一度も染めた事の無いだろう黒く長い髪。日焼けをした事のなさそうな白い肌。全てが整えられたパーツ。何処を取っても文句の言いようがない美人だ。
そんな事を考えていると、彼女が突然振り向き、
「貴方は誰?」
っと聞いてきた。
覚えていないのも当然だ。彼女は泣いていたのだから。
「えぇ~と、今日の夜に会ったんだけど覚えてない?」
「もしかして、あのお茶の人?」
彼女はちゃんと覚えてくれていた。
「そうそう!ちゃんと覚えててくれたんだ。それで今日は少し話がしたくて来たんだけど良いかな?」
「構わないよ♪それに、昨日のお茶の御礼もしたいし。」
「お茶の御礼なんて良いよ。それよりこれ、お土産!話をするだけじゃつまらないから!」
僕はそう言って買ってきたお菓子とジュースを彼女に渡した。
「ありがとう♪えぇ~と?」
「あぁ!伊庭一輝。一輝って呼んで。」
「ゴメンね。昨日の事は余り覚えてなくて。私は音無梓。梓って呼んで。」
僕はいきなりで失礼かと思ったが梓ちゃんと呼ぶことにした。
「それで、梓ちゃんの好きなお菓子だけど、これでよかったかな?」
僕はチョコレートと飴を中心に色々と買っていた。
「全然大丈夫。ありがとう♪」
「それはよかったよ♪」
それから僕達はお菓子を食べながら話をした。だらだらと長く話をした。でも僕が本題を切り出すことはなかった。『どうして夜に泣いていたの?』僕は怖かった。また彼女が泣き出すのではないかと。
「また明日も来ていいかな?」
僕は自然と言葉にしていた。
「いいよ♪私も毎日暇だし。」
「じゃあまた明日♪今日と同じぐらいに来るよ。」
「待ってるね♪」
僕は梓ちゃんのその言葉を聞いて病室を後にした。
僕はその晩、こっそりと中庭を見に行った。梓ちゃんがきになったからだ。僕は少し不安になりながら中庭に向かった。しかし、中庭には誰の影も見当たらなかった。
「良かった。じゃあ帰ろ。」
そう言って自分の病室に戻った。
病室に戻ってから、僕は明日の事を考えて寝た。
幸せな明日を夢見て。
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