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僕と梓ちゃんは売店の隅に居た。見回りの看護士から逃げる為だ。お菓子のことや、今回のことで売店には、かなりお世話になっている。
僕達は昼の内にルートを決めていた。それで今は看護士に見つからないように隠れているのだ。
「よし!今だ!」
僕は小声でそう言って、梓ちゃんと中庭に急いだ。案の定中庭は誰も居なく、シーンとしている。その月明かりしか届かない中庭を僕と梓ちゃんは歩き出した。
数分歩いて僕はある話を切り出した。
「梓ちゃんは余り病室から出れないんだよね?」
「そうだよ。」
「じゃあ欲しい物とか、買い物とかあったら僕に言って。僕が足になるよ!」
「それって私のパシリになるってこと?」
梓ちゃんが難しい顔で聞いてくる。
「簡単に言えばそう。でも、これは僕の意思でもあるから少し違うかなぁ!しいて言うなら…お使い!そうお使い!」
そう言って笑って見せると梓ちゃんも笑ってくれた。
「お使いって…。まぁ~いいや。じゃあよろしくね!」
「勿論!」
この計画は、昨日の夜にふと思ったことを梓ちゃんにそのまま伝えただけの計画だった。でも梓ちゃんはそれだけで喜んでくれている。結果はオールオッケーなのだ。
ふと時間を見ると12時近かかった。僕は梓ちゃんを病室まで送って、自分の病室に戻ろうとした時、
「あぁ!待って!早速お使い!」
っと、言って何かをメモ帳に書きだした。書き終わると『はい』っと、言って渡してきた。
「自分の部屋に帰るまで見ちゃダメだから!」
「わかった!じゃあおやすみ♪」
「おやすみ一輝♪」
僕は途中で開けてしまおうかと思ったが、ちゃんと自分の病室に戻ってから開けた。中には
『太宰治の人間失格よろしくね!でも、売店じゃあ売ってないから!ガンバッて!』
っと書かれてあった。
「マジ!」
僕は本気で驚いた。いくら僕が外室出来ると言っても、病院内の話だ!病院から出るには、こっそり抜け出すしかないのだ!
僕は決心して抜け出す方法を考えていた。その途中、お金をもらってないことに気が付いた。
「これじゃあパシリと変わんないじゃん。」
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