18人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日の夜。10時になる30分前。僕は梓ちゃんに頼まれた、人間失格を書いに行く為中庭に居た。中庭には外へと通じるドアがあり、そこを使えば簡単に病院を抜け出せる。
「よし!誰もいない。」
外に出た僕は本屋に向かって走り出した。本屋までは走って10分といった所だ。走っている途中、すれ違う人の視線が鋭い。それもそのはず。僕の今の格好はスエットだ。看護士などにばれない為にスエットで出て来たのだ。人の視線をかわしつつ、ようやく本屋に着つくと、閉店まじかとあって人影は少ない。急いで目的の本を探すと、レジに向かった。この時間と、この格好だけあって、レジの人にまじまじと見られた。
無事、本を買って病院に帰ると、もう、10時を済んでいた。
「やばいなぁ~。」
そう言って出て来たドアに手をかけると、思った通りドアは開かなかった。
「はぁぁ…。」
こうなると正面突破しかない。でも、これにはリスクが多い。第一に看護士に見つかりやすい。それでも意を決して正面から入ると
「…!!」
思った通り見つかってしまった。
「あれ~?一輝くん。こんな時間にどうしたの?」
声の主は絵理さんだ。
「あのぉ~。そのぉ~。なんと言うか。」
そこに自動販売機が目に入った。
「そうそう!ちょっと飲み物を!」
僕は精一杯自動販売機を指差した。
「あぁ~そっかぁ~♪でも、夜更かしはダメだぞぉ~!それに早く寝ないと大きくなれないぞぉ~♪」
「はぁ~い。おやすみなさい。」
そう言って、僕は小走りで梓ちゃんの病室に向かった。不幸中の幸いか、見つかった看護士が絵理さんで良かった。
「入るよぉ~♪」
一言断ってから梓ちゃんの病室に入った。
「あれ?」
梓ちゃんは既に寝ていた。ダイエットのことや、僕が今晩、本を届けに来ることなんてすっかり忘れてグッスリ寝ていた。
最初のコメントを投稿しよう!