水滴

2/10
前へ
/270ページ
次へ
   霊感がある、っていうのは嫌なことだ。  見たくもないモノが見えてしまう。俺にはなんの因縁もない、初対面の霊が、たとえば得意先の応接室の隅や、パチンコ屋のトイレ、スナックの一番奥の席なんかに居て、恨めしげに睨まれた時には…。  つくづく、こんな体質に産んでくれた母親を恨めしく思う。  さらに、俺は極度の怖がりだ。霊とは関係のないスプラッタ映画も、金田一耕助シリーズすらもマトモに観れない。  そんな俺が、先週末から長期出張のために借りているウィークリーマンション…。  ここが、サイアクだ。  どうやらこの部屋は、霊の通り道になっているらしい。  
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7287人が本棚に入れています
本棚に追加