水滴

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   アパートのすぐ裏手は海だ。その海は小さな湾になっている。  聞いたところでは、明治時代にこの沖合で沈没した商業船があって、乗組員の遺体がこの浜に、何体も打ち上げられたらしい。  俺はその話を聞いたその夜、さっそく霊に出くわした。  …というより、部屋に入って来やがった。  23時過ぎにベッドでうとうとしていると、窓際に男の姿がすぅーっと現れた。俺は怖くて怖くて、布団を頭まで被って、居なくなるのを待った。  霊は部屋を横切ったかと思うと、そのまま玄関の方から出て行くんだ。  見てないのに、何で分かったかって?  やっぱ、海から上がってきたんだろう。フローリングに、水滴が落ちてるんだ。    窓際から玄関に向けて、一直線に…。  
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