水滴

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   生きてる人間が怖いって理屈も解るが…幽霊の怖さは理屈じゃない。  今日の得意先廻りが終わり、近所の居酒屋で夕食を済ませる。  部屋に、戻りたくない…。  怖さを紛らわすための酒が増える。  ベロベロに酔って帰った俺は、風呂どころか歯も磨かず、スーツを床に脱ぎ捨てたままベッドに入った。  …翌朝、頭痛を抱えながら起きた俺は、それを見て恐怖と後悔の念に襲われた。  フローリングには、また点々と小さな水溜まりが出来ている。その経路に、スーツとズボンがあった。  手にしてみるまでもない。浅いグレーの生地に、しっかりと染みがつけられていた。  
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