水滴

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   俺が夜中に目を覚ましたのは、携帯のけたたましい着信音が鳴ったからだった。  ベッドから飛び起き、点滅するランプへと歩を進める。  あと一歩のところで足を滑らせ、左腕を食卓テーブルにしたたか打ちつけた。 「はい、山口です」 『あぁ山口君、遅くに悪いねえ』  取引先の、川島社長だった。ぶつけた腕の痛みを気にしながら、俺は照明のスイッチへと手を伸ばす。 「いえ、時間のことなら気にしないで下さい」 『いやぁ、申し訳ないんだが、発注データの流し方で分からないことがあってね。追加訂正の場合は…』  俺は川島社長の声を聞きながら、明るく照らされた部屋を見て、愕然とした。  窓際の小皿はひっくり返され、あたりに塩が散らばっていた。  そして…  床一面に、無数の水溜まりが出来ている…。  
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