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バイトの給料が入った浩人は、久しぶりに自炊することを思い立った。
朝はギリギリまで寝ていたいから、朝食など取らない。昼は学食。晩飯はバイト先の居酒屋でまかない飯があたるし、シフトに入ってない日はコンビニ弁当…。
栄養のバランスを気にした訳ではない。『メタボ』なんて言葉も、年齢的にまったく無縁だと思っている。
ただ、母が送ってよこした米を、もう2ヶ月も放置していたことが、心のどこかに引っかかり続けていた。
──おかずは後で、スーパーに行ってから決めよう。まずは米を研がないと。
小さな虫も数匹飛び交うほどの、お世辞にもキレイとはいえないキッチンで、浩人は2合分の米を水にさらし、研ぎ始めた。
やり始めれば、面白いと思える。ただ、この2年半の間、米を炊いた事など、数えるほどしかなかった。
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