ルームメイト

4/10
前へ
/270ページ
次へ
   勤務先がなくなったから、私の身を案じて訪ねる同僚も、当然居ない。  妻は、居ない。パート先の店長とともに行方を眩ましてから、もう随分の年月が流れた。  子供は、居ない。子作りという共同作業を、妻が拒否し続けていたから。  私は、家族という2人の集団においても、孤独だった。  肉親は、居ない。父は、母と幼い私を捨て、消えた。私が物心ついた頃、母は自らの人生を断った。  友人は、居ない。友人というものが、存在したことはない。    私の周りに居たのは、私に関わろうとしない、私以外のニンゲンたちの群れだった。  
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7287人が本棚に入れています
本棚に追加