7287人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、膝を抱えたまま、部屋を見守り続けている。
私とともに過ごしてきた私の物たちが、運び出された。
何もない部屋で、私は膝を抱えている。
やがて、窓枠にうっすらと雪が積もる。
それが融け、いつしかセミの鳴き声が、がらんとした部屋にも響き渡る。
…何度繰り返したのだろう。
私の部屋を、訪れる者があった。
私は姿勢を変えず、来客たちを見守っていた。
その若者は、眩しさに包まれた笑顔で、私の部屋を隅々まで眺めている。
私には、持つことがなかった、希望を携えて。
最初のコメントを投稿しよう!