ルームメイト

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   私は、膝を抱えたまま、部屋を見守り続けている。  私とともに過ごしてきた私の物たちが、運び出された。  何もない部屋で、私は膝を抱えている。  やがて、窓枠にうっすらと雪が積もる。  それが融け、いつしかセミの鳴き声が、がらんとした部屋にも響き渡る。  …何度繰り返したのだろう。  私の部屋を、訪れる者があった。  私は姿勢を変えず、来客たちを見守っていた。  その若者は、眩しさに包まれた笑顔で、私の部屋を隅々まで眺めている。  私には、持つことがなかった、希望を携えて。  
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