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浩人は、無精だった。特に炊事、掃除はとことん手を抜く。洗濯も。
──彼女でもいればなぁ。
一人暮らしを始めて以降、彼女と呼べる存在と無縁だった浩人は、いつしか妄想の中で『彼女』と『家政婦』を混同していた。
米研ぎを終え、炊飯器にセットする。研いでから、しばらく時間を置いた方が美味しく炊ける──。ふだんやらないだけに、そういう手順はしっかり守る。
しかし、衛生観念に乏しく、たとえばホコリや虫などが食べ物に付くことに無頓着な浩人は、炊飯器のフタを閉じておくことなど、まったく意識してはいなかった。
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