炊飯器

3/10

7286人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
   浩人は、無精だった。特に炊事、掃除はとことん手を抜く。洗濯も。  ──彼女でもいればなぁ。  一人暮らしを始めて以降、彼女と呼べる存在と無縁だった浩人は、いつしか妄想の中で『彼女』と『家政婦』を混同していた。  米研ぎを終え、炊飯器にセットする。研いでから、しばらく時間を置いた方が美味しく炊ける──。ふだんやらないだけに、そういう手順はしっかり守る。  しかし、衛生観念に乏しく、たとえばホコリや虫などが食べ物に付くことに無頓着な浩人は、炊飯器のフタを閉じておくことなど、まったく意識してはいなかった。  
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7286人が本棚に入れています
本棚に追加