エアディナー

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   …ダメだ。もう布団に入って2時間も経つが、空きっ腹で寝れない。  俺はあてもなく起き出し、とりあえず水を2杯飲んだ。冷たさが胃袋に染みていく。少しは落ち着いたか。  しかし、布団に戻る気になれない。俺はガラステーブルの前に腰を下ろし、ぼんやりと辺りを見渡した。  一週間前に注文した、宅配ピザのチラシが目に留まる。俺は無意識にチラシを手に取り、しばらく眺めていた。  濃厚なチーズの香りが、サックリとしたクラストの歯触りが、食欲をより刺激するソースが、そしてベーコンの旨味が、エビの歯応えが…。  考えることを止められない。こんなにリアルに、食感が甦るなんて…。  俺はピザを、想い続けた。右手の3本の指が、1ピースを持ち上げる。粘り、やがてこぼれ落ちそうになるチーズをうまく絡め取り、口へと運ぶ。ヤケドしたって構わない。一気にかぶりつく。  美味いッッ。  俺は夢中でかぶりつく。二口、三口…。そして、次のピースに手を伸ばす。タバスコもまぶしてみる。旨味がさらに増す。死ぬほど美味い、うまい、ウマイ…。  最後のピースを食べ終えた時、俺は満足感を得ていた。そして、妙なコトに気づいた。  腹が、膨れている…!?  
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