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その夜も生理が終わっていないという理由で、達也は性欲を解消することなく、由美の傍らで悶々とした一夜を過ごした。
「じゃ、行ってくるね」
達也は、笑顔で出て行く由美を見送る。その表情は、彼女が言うとおり『満たされ』ていることが窺えた。
しかし…達也自身が、満たされていなかった。
由美はなぜ、満足しているのか。夕べの俺への言葉を、信用していない訳ではない。しかし…。
第一、由美が毎夜必ず見るという、レイプされる夢…。非常にリアルに、そして目覚めた時には、疲れや気だるささえ感じるという。
「……」
達也のもやもやとした不満が、徐々に不安に、そして再び疑念へと変貌する。
だからといって、いきなり訪ねることはしたくなかった。彼女を疑うような、度量の狭い男に思われたくないから。それにもし、その疑いが現実のものだとしたら…。修羅場に向き合う覚悟すら、達也は持ち合わせていなかった。
――俺の居ない夜、アイツがこの部屋に誰も連れ込んでいない事を、確認しておきたい。
達也は携帯を取り出し、滅多に連絡を取ることのなくなった旧友に、電話を架けた。
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