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合い鍵で由美の部屋へと戻った達也は、押し入れの奥から天井裏へと入り込んだ。
断熱用のグラスウールを押しのけ、光の射す方向に這っていく。
たどり着いたのは、室内用の換気口だった。
首を捻り覗き込むと、格子の向こうに由美のベッドが見える。達也はなぜか、軽い興奮を覚えた。
カメラの位置を固定し、モニターで確認する。ベッドの全景が映されているのを見てから、達也はタイマーをセットした。
部屋へと降り立った達也は、痕跡を残さないよう丹念に辺りを掃除した後、由美にメールを入れた。
『兄貴が風邪こじらしたって
泊まりがけで様子見てくる
明日には戻るから』
勤務中の由美からの返信はない。受付嬢として、脂ぎったオヤジどもの案内に忙しいんだろうか。
達也は、渋めの中年男性から食事に誘われる由美の姿を一瞬想像したが、それが頭の中で広がっていくことを恐れ、すぐに打ち消した。
軽くため息をつき、達也は立ち上がった。
由美の部屋を後にする。
達也は、ドアをロックし、自宅へと向かった。
悶々とした夜を、独りで過ごす自分を想像しながら。
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