炊飯器

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   めったに行かないスーパーだから、浩人はこの時間が実は一番混み合っていることなど、全く分かっていなかった。  主婦の圧倒的なパワーに押され、夕食のメニューを決めるところではなかった浩人は、あてもなくレトルト食品の売場をさまよっていた。 「あれ、米沢くん…?」  浩人に声をかけてきたのは、同じ大学の高松美樹だった。 「ああ…。こんちは」  バイト先の同僚以外の女性との会話は、久しぶりだった。買い物カゴを手にした自分の姿が滑稽に思えた浩人は、落ち着かない面持ちだった。  「晩ごはんの買い出し?」 「ん、あぁ…」 「ちゃんと自炊してんだあ。エラいねっ」 「そっかぁ…?」   「今日は何を作るの?」  あまりにもレパートリーの少ない浩人は答えに窮し、あたりを見回した。とっさに、美樹の背後にあったパッケージが目に入る。 「えっと…寄せ鍋でもしようかなって」  
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