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「ゴメン、急に押しかけちゃって」
由美は申し訳なさとともに、不安を抱えた表情で入ってきた。
「会社は」
「具合悪いって…早退してきた」
達也はクッションを勧めながら訊いた。
「マジで具合悪いのか」
由美はこくりと頷いた。
「具合が…ってか、ちょっと心配ごとあって」
傍らに腰掛けた達也は、引きつった顔で言った。
「例の…夢の話か」
由美は首を横に振る。
「あのね…。おととい相談しようか迷ってて…あの時はウソついちゃったんだけど」
「なっ何だよ…」
――ウソ…?
ビデオの由美の姿が達也の脳裏に蘇る。もう、何があっても驚かない。達也は由美を見つめ、次の言葉を待った。
由美は、達也の視線に耐えかねて一度顔を背けたが、やがて意を決したように口を開いた。
「あのね…生理…十日以上、遅れてるの。タッちゃん、いつも着けてくれてるのに…どうしてだと思う…?」
(了)
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