炊飯器

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  「へぇー。誰かさんと一緒なのかな」  浩人は慌ててかぶりを振る。 「そんなのいないって」  美樹はちょっと意地悪な笑みを返したあと、浩人に言った。 「ひとりで鍋すんの?寂しいねっ」  浩人は力なく笑う。 「もしよかったら、なんだけど…どうせ鍋するんなら、ウチで一緒にやらない?実家から野菜いっぱい送られてきて、ちょっと困ってたんだ」  あまりにも意外な呼びかけに、浩人の思考は一時停止した。 「やっぱ、迷惑…?」 「いいいやいやいや。…ホントいいの?」 「うん。食材はワリカンでねっ」 「じゃあ…何買えばいいかな」 「米沢くん、買うもの決めてたんじゃないの」  浩人は慌てて、『寄せ鍋の素』を手に取った。 「これが美味いんだよ」  そう言いながら、浩人はパッケージの写真を見つめ、必要な食材を懸命に覚えた。  
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