一人暮らし

門出

　
　誰しも、心変わりというものはある。

　逆に、永遠にひとりを愛し続けるなんて、できっこない。

　少なくとも、自分には無理な事だ。たぶん、世の中の男はみんな――淳史は、そう考えることで自分を正当化していた。

　沙織は、よく尽くしてくれる女だ。細かいところにもよく気がつく。

　淳史は、付き合い始めた頃はその気配りに感激し、愛されていることを実感していた。

　しかし今となっては、その気配りも何もかもがうざったいとしか思えなかった。

　――おそらく沙織は今も、俺を愛し続けているのだろう。

　その証拠に、異常とも思えるほどの、粘着的な嫉妬深さがあった。

　職場の同僚と飲みに行っただけで、やたらと探りを入れられる。しかもダイレクトにではなく、徐々に間合いを詰めるように、ねちねちと。

　毎回、潔白を証明するために、どれほど気を遣っていることか。

　淳史は、もはや沙織との交際に情熱を持てず、ただ窮屈さのみを感じ続けていた。