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「えー、そんなんでウジウジ悩んでんのぉ」
裸のままベッドの足元辺りに腰掛け、ピアニッシモに火を点けた繭子は、淳史を振り返り、髪をかき上げながら言った。
ため息とともに吐き出した薄い煙が、闇に溶け込んでいく。
「別れてもいい人でいたいなんて、都合のいいコト考えてんじゃないの?あんた、優しすぎるから」
「そんなんじゃねえよ」
淳史は身を起こし、繭子の肩に腕を回した。
「じゃあ何さ」
「中途半端な別れ方だと、却って未練引きずらせちゃうんじゃないかってな」
「したら…アタシも協力しよっかぁ」
繭子の悪戯っぽい笑みが、淳史を困惑させる。彼女は明らかに、この状況を楽しんでいる様子だった。
「えっ…?」
「連れてってよ。アタシが縁切ってあげるから」
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