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ドアを開いた沙織の表情に、驚きの色はなかった。
すべてを受け入れるかの様な、悟りきった顔だった。
おそらく今日のメールを受け取る以前から、覚悟を決めていたのだろう。
チャイムを押した時はさすがに緊張というか神妙な面持ちだった繭子も、いくぶん拍子抜けした様子だった。
しかし、沙織がコーヒーを淹れようとテーブルに手を付いて立ち上がった際に、彼らは見てしまった。
左の袖口から覗いた、手首に巻かれた白い包帯を。
二人は顔を見合わせた。しかし、思いは同じ。
――今さら、引き返せない。
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