自我

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   気に食わない。こいつは、正確に俺の動作を真似しやがる。俺の先を読んで。  どんな素早い動きでも。ならば…これはどうだ。  俺は、頬の肉を掴み、爪を立てた。どうだ、痛えだろ。  人間誰しも、自傷行為には制御が働く。今のオマエにもだ。  俺は、平気だ。俺はオマエとは違う。痛くない。いたくない。イタクナイ…。  俺は指先に力を込める。ブツッ、ブツッという感触とともに、皮膚が裂け、血が流れ出し、爪はさらに深く食い込んでいく。  痛いんだろ?  俺は、痛くねえ。  
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