炊飯器

8/10
前へ
/270ページ
次へ
   翌週。浩人は両手にレジ袋を提げ、部屋に美樹を招き入れた。  美樹はテーブルの前に腰掛けるまでもなく、食材を冷蔵庫に収納した後、キッチンに立った。 「キレイにしてるね」 「そっかなぁ」  さっき、慌ててスポンジで磨いておいたシンクを誉められ、浩人は胸をなで下ろす。  ──ぬかりはないはず。掃除機は部屋中にかけたし、トイレも磨いておいた。念のためのバスルームも…。  普段の生活態度がだらしないと自覚しているだけに、どこかでボロがでやしないかと、浩人は軽い緊張を覚えた。  美樹が潔癖症であることは、先週訪れた彼女の部屋を見て、実感していたから。  浩人は改めて自分の部屋を見渡し、安堵したその時、心臓を突き破るかの様な美樹の悲鳴が響いた。  
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7287人が本棚に入れています
本棚に追加