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「きゃあああああっっ」
美樹の悲鳴に驚いた浩人は、総毛立ちながらも、慌ててキッチンへと向かった。
そこには美樹が、しゃもじを床に落とし、腰を抜かした状態でへたり込んでいた。
「だっ…大丈夫?」
浩人は手を差し伸べたが、美樹はなおも後ずさる。
「やっ…やだやだ…何あれ」
美樹の視線を辿ると、フタの開けられた炊飯器が目に入った。
──しまった。
浩人は、猛烈に後悔した。一週間前に炊いた米を忘れていた…。
黄色く、ガチガチに固まっているか…いや、美樹の驚きようから考えて、黒と緑色の入り混じったカビがびっしり…──。
「ゴメンっっ。すぐ捨てるよ」
美樹は表情を強ばらせたまま、いやいやと首を振り続ける。
──とんでもないモノ見せちゃったなぁ。
浩人はその場を取り繕おうと、しゃもじを拾い上げ、レジ袋を広げて、炊飯器の中を覗き込んだ。
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