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「ホントに魔法なんですか?」
コーヒーを飲みながら青年に問い掛けてみる。何故か疑心は全く浮かばない。ただ、確認するように問う。
「ええ、本当です。これも、立派に現実なのです。」
青年はコーヒーを飲みながら相変わらずの笑みをこちらへ向ける。
私が頷くのと同じタイミングで鞄の中から『交響曲第九番』が鳴った。メールの着信。取り出して内容を見る。友人からのメール。
[明日、国語あったっけ?]
いつも通り「知らない」と打とうとして、指を止める。そう言えば、借りが一つあった。手帳を取り出して時間割を見てみる。
[三限が国語]
それだけ打ち込み返信。
時刻は午後7時半。
「すみません、そろそろ帰ります。お会計は?」
財布を取出して席を立ち、カウンターの向こうに問う。
「二百円……でどうでしょうか?」
青年は悩ましげな表情で答える。
どうもなにも、俄然、安い方だろう。
「………ごちそうさま、お釣はいらないです。」
三百円をカウンターの上、カップの横に置いた。きょとんとした青年に笑みを浮かべて会釈する。
「ありがとうございました。またのお越しを。」
柔らかい言葉に見送られ店を出た。
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