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私は天井を眺めながら奥のカウンター席に着く。視線を落とし、冷蔵庫の整理に没頭し始めた青年の背中を数秒眺めてみる。
「うむむ、入りませんね。これを此処に……これは、賞味期限2002。あらら、捨てなきゃいけませんか。」
頭の中でこの喫茶店の管理体制を追及する以外、なんの面白みもない。
構われる様子は今の所、無い。視線のみの声無き抗議を向けた後、私は天井の観察に戻る。
一言だけこの喫茶店を褒めるなら、私はこの箱庭の様な星空が気に入った。
「コーヒーで良かったですか?」
「え?あ、はい。良いです。」
我に返る。星空を眺めるのに夢中だった私の真正面から穏やかな声が掛かった。
青年はカウンターを挟んだ真正面に立っていた。冷蔵庫のドアは閉じている。買い物袋もない。片付けは終わったらしい。
「やっと営業開始ですか?」
不意を突かれた仕返しに嫌味を呟く。
「放ってしまいすみません。ああゆうのって、片付かないと気が済まない事とかないですか?」
それを微笑で受け流す青年。その対応は容姿に似合わず年季が入っている。
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