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言いながら青年は後ろの棚の中段から紙袋を取し、無造作にフライパンへ中身を注ぐ。形から見てコーヒー豆。固い物がフライパンへ落ちる音が響いた。
豆がフライパンの面を適度に埋め尽くす。棚に紙袋を戻りコンロを操作する。フライパンの下にガス特有の蒼い綺麗な火が点る。
わかる気はする。
しかし、客を放るのは頂けない。
「時と場合にもよると思います。」
芳ばしい豆の匂いと天井の星空で、休まる目と鼻。未だ休もうとしない口で青年に応える。青年にそれ以外注意は向けない。
「あらあら、手厳しいですね。」
いつの間にか豆は専用の機械に入れられ挽かれている。その音と共に漏れる青年の声。私はそれを聞き流し箱庭の星空の観察に耽っていた。
青年は砕けた豆をコーヒーメーカーへセットし湯を注ぐ。一滴づつポットへ落ちる黒い液体。
それが満ちるまで、まだ少し時間が有る。満ちるまでの時間を天体観測で潰そうと思った。
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