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「星がお好きなんですか?」
青年がカップにコーヒーを注ぎながら問い掛けてきた。
「……いえ、そういうわけじゃ。見たことないし」
天文なんて中学で少し齧っただけだったろうか。星座は多少わかるが、雑誌で見てただけ。
無意識に頬杖を付いていた右手を振りながら答える。
「そうなんですか?随分、熱心に見てますので……」
微笑浮かべた青年の声と同時にコーヒーカップが目の前に届く。ポットに残ったコーヒーはもう一つのカップへ注がれていた。
「空を見上げたって、星なんて見えないです」
言いながら口元へカップを運ぶ。熱い湯気を息で吹き飛ばし、カップの縁に唇を付ける。ゆっくりと中の液体に舌を浸ける。
……。
普段、コーヒーの味なんて気にしないが、理由もなく旨く感じる。
「そうですね……街の灯りは眩し過ぎます。星の光が陰る程に。」
カウンターの向こうに座った青年はコーヒーを飲みながら答えを返してくる。
「これは……どうやってやってるんですか?」
見上げてみる。見えるのは満天の星空が広がる天井。
無機質なプラネタリウムとはどことなく違うく感じる人口の星の海。
その仕掛けが気になる。
「これですか……魔法です。」
同じく天井を見上げた青年。考える仕草数秒。私の顔を見てニコリと笑んだ青年はキッパリと言い切った。
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