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「……はい?」
思わず聞き返してしまった。魔法……企業秘密なのだろうか。よく原理を明かしたくないモノに魔法と言う単語を使うが、それと同じなのか……それとも。
「ですから、魔法です。 良いですか?昼だろうが、夜だろうが、晴れだろうが、曇りだろうが、星は絶えず瞬いています。これは複数の式、所謂呪文でできていまして、大まかに言うなら『観測』、『再現』、『視覚化』、『投影』などの式です。これをほぼ同時に起動しています。」
ただポカンと聞いているしかない。聞き慣れない上に現実離れしている理論。青年の表情はにこやかだが、真面目に語っているように見える。
「……そして、それにある特殊な作業を済ませて、一般的に言う魔力を通せば、ご覧の通りの星空が見えるのですよ。」
良くわからない。だけど、この天井を見れば、普通じゃないことはわかる。魔法だと言われて、納得できてしまう。
「こんな事もできるんですよ?」
青年はにこやかに言いながら、天井を指差す。瞬間、指先から光の粒が真っ直ぐ天井へ飛んだ。逆さに見れば、滴が水面へ落ちるように。
しかし、広がるのはただの波紋では無かった。
波紋の代わりに同心円を描いたのは流れ星。色とりどりの流れ星が八方へ広がり、尾を残して溶けていく。
「きれい………」
一言で表せば『花火』。
星の花火は鮮やかな光の余韻を残して消え失せる。
青年は惚ける私を見て、ただ微笑を浮かべていた。
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