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都合のいい関係を自分から言い出しておいて。
ドライに徹すると約束した。
その証拠に、樋口は奈々を愛していると一度も言った事がない。
いつでも離れられるように…どこか1枚壁を隔てたような付き合いだった。
自分が麻薬代わりだと言われても、笑っている樋口の様子を思い出す。
あくまでも、奈々は一瞬お互いの傷を埋めあう同士ようなもので…決して恋人などという甘い関係ではなかった。
「私が……馬鹿なんだ」
挨拶が終わって、仕事に戻るオフィスの風景を見つめながら、奈々はぽつりとそんなひとり事をつぶやいた。
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