10.動揺

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 都合のいい関係を自分から言い出しておいて。  ドライに徹すると約束した。  その証拠に、樋口は奈々を愛していると一度も言った事がない。  いつでも離れられるように…どこか1枚壁を隔てたような付き合いだった。  自分が麻薬代わりだと言われても、笑っている樋口の様子を思い出す。  あくまでも、奈々は一瞬お互いの傷を埋めあう同士ようなもので…決して恋人などという甘い関係ではなかった。 「私が……馬鹿なんだ」  挨拶が終わって、仕事に戻るオフィスの風景を見つめながら、奈々はぽつりとそんなひとり事をつぶやいた。
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