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今、俺の目の前で小さな女の子がトラックにひかれた。
辺りに血が飛び散り、肉が四散し、女の子と呼べない程、それはぐちゃぐちゃに変形していた。
俺は、吐きそうになるのを堪える。
ドス!
俺の後ろで、ドラマとか映画とかに出て来そうな、人を刺す効果音がした。
振り返ると、そこには狂気に満ちた目をした若い男性がいて、手には血のついた刃物を持っていた。
その男性の前で、中年の男性が血を流して倒れていた。
若い男性は、中年の男性の懐を調べ始めて、財布らしき物を抜き取って、そのまま立ち去ってしまった。
目を覆いたくなる光景だった。
―――ねぇ、どうして、たすけてくれなかったの?
ゾクっと背中に悪寒が走り、俺はゆっくり振り返った。
うぁぁぁっ!!
俺は悲鳴を上げた。
そこには、顔がぐちゃぐちゃに変形し、手足があらぬ方向に曲がっている女の子が立っていた。
曲がっているはずのその足で立っている姿は、まるで化け物のようだった。
―――たすけてくれれば、わたしはいきていられたのに
俺は恐怖のあまり後ずさってしまう。
トンっと背中に軽い衝撃があった。
壁にぶつかったと思ったが、すぐに間違いと気づいた。
ここに壁なんてないことに。
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