遠い日の記憶。

2/2
前へ
/4ページ
次へ
見覚えのある姿。 嗅いだことのない、煙草の匂い。 「王のいる城まで後少し。世界平和の敵を、今こそ倒す時だ」 互いの夢が叶った事を、俺だけが…僕だけが今知った。 久しぶりに会った友は昔と何も変わらなくて。 僕と違って、まだ、人間で。 「……リカ、無事でいてくれよ」 リオン、僕は王国を守る兵士になったんだ。 リオン、僕は君に会いたかったんだ。 リオン、今でも君は僕の親友だ。 ガラクタになった僕の近くに煙草が落ちる。 部隊を指揮する友の声が響き、人の波が僕の上を移動していった。 「…………」 あれ、おかしいな。 どうしてだろう。 ……ああ、そうか。 「そうだよ。嗅覚なんて…とうのむかしになくしたじゃないか」 煙草の匂いがしない事に気付いてしまった。 馬鹿な話だ。 機械が感傷に浸るなんて。 一瞬、吐いた息が白く見えて…僕のメインカメラは完全に機能を停止した。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加