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よし、言いきった。
相当恥ずかしいセリフを叫んでしまったが、今はあまり恥ずかしさとかはない。
寧ろ誇らしいというか、何故か達成感のようなものを感じてしまっている。
田中さんはわかる人だ。
ここまで恥ずかしいセリフを言っても、まさか笑われることもないだろう。
「ぷ……く…くく……」
「……田中さん?」
「あははははははははっ!! も、もう無理! 限界! 小西、熱すぎっ……!!」
「へっ……え……田中さん!?」
薄暗い体育倉庫。何故か腹を抱えて盛大に笑い続ける田中さんを前にしてあたふたしている俺に答えを授けるかのように、その倉庫の扉は開かれた。
───ゴゴゴゴ
重い鉄の扉が動く音と共に、眩い光が体育倉庫内に流れ込んで来た。
……そうか。昨日の雨は既に止み、今日はこんなに良い天気になっていたのか。
その眩い光の中、瞳を潤ませてこちらへ駆け寄ってくるその美少女は、なんだかいつもよりも数段可愛く見えた。
「幸人く~~~~ん!!!」
自分でも驚くくらい自然に、俺は俺の胸に飛び込んで来た涼をぎゅっと抱き締めていた。
「ちょ……と、これは……何? 涼、一体何がどうなって……?」
「幸人くん幸人くん幸人くんゆき人くんゆきとくんゆきときゅんっ! 大好きっ!!」
戸惑う俺を他所に、涼は俺の胸に顔を埋め、頭をうりうりと押し付けてくる。
こここここ、これは……一体……何で!? 何故、こんな嬉し恥ずかしドキドキイベントが発生しているんだ!?
涼が俺に抱きついてて、俺が涼を抱き締めてて……?
うわっ……なんかすごいいいにおいが………って、俺は一体何を考えてるんだ!
と、とりあえず落ち着こう!
……いや、無理だ。この状況で落ち着けるか。
よし、まずは涼を落ち着かせよう。
「涼、とりあえず落ち着け! 一体どうしたっていうんだよ?」
しかし、俺の質問に答えたのは、隣で頬を赤く染めながらも大爆笑している田中さんではなく、相変わらず俺に抱きついて頭をうりうりと押し付けている涼でもなかった。
「おー、幸人。なんだかむかつくくらい羨ましい状況になってるじゃないか!」
涼によって開かれた扉から中へ入ってきたのは、お馴染みの爽やか眼鏡こと、俺の親友(笑)の吉川だった。
こんなやつ、(笑)で十分だろう。
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