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「吉川っ!? これは一体どういうことだ!? お前眼鏡かけてんだから説明しろ!」
「……幸人。夏目さん抱えたまま凄んだって格好つかないって。あと、全国の眼鏡使用者に謝れ」
く……確かに、吉川の言うことは正論だな。
「涼、悪いがそろそろ離れてくれないか? 人がいることだし。あと、全国の眼鏡使用者の皆さん、ごめんなさい」
そう言って涼を少し持ち上げて退かすと、涼はさも満足したという表情で、俺に微笑んだ。
「まぁ、どういうことかってのは、外に出ればわかるさ。夏目さん、気が済んだならそろそろ幸人を外に連れて行こう」
「は~い! それじゃ幸人くん、こちらへどうぞっ!」
吉川の指示で涼は俺の手をとり、俺は涼に引っ張られるようにして体育倉庫から生還した。
体育倉庫から出ると、沢山の野次馬らしき生徒達がいた。
そして、彼らは俺の姿を確認するや否や、一斉に校舎の方向を指差した。
その方向、校舎の窓からは、大きな文字の書かれた垂れ幕が下がっていた。
『ドッキリ大成功!!』
「………………」
もちろん、言葉は出なかった。
「どうどう、幸人くん! びっくりしたっ?」
涼を含め、にやにやとする一同を見渡し、俺はやっと一言、言葉を搾り出した。
「えっと………どこから?」
その問いには、涼が答えた。
「んっと……猫の田中さんに命名したところから?」
いや……それは嘘だろう。
名付けたのは梓だし。
「昨日の昼休み、私が小西に話しかけたとこからだよ」
体育倉庫から出てきた田中さんはそう訂正した。
多分、これが本当だろう。
ということは、俺が昨日の朝感じた嫌な予感というのはこれのことで、昨日の涼からのメールの『信じてる(・_・)』もやっぱりこれのことで、なんかやけに田中さんと二人きりになることが多かったのも、田中さんが家に来たのも全部仕組まれていたことだったわけで、あの、昼休みに言いかけたがバスケ勝負によって結局さっきまで言えなかったというのは予め書かれていた台本通りだったということで、田中さんが俺に気があると思ったのは俺がまんまと涼の策略に引っ掛かったということで、その上あんな恥ずかしいセリフまで吐いてしまったわけでして………当然、皆さん聴いていたわけですよね。
「いやああああぁぁ!!!!!!!!」
俺は、雨上がりで少し水溜まりの目立つグラウンドを、無我夢中で駆け抜けた。
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