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四月。
この端山学園に入学して一週間余りが過ぎた頃、俺にも友達というものが何人かできた。
中でも吉川とかいう爽やか眼鏡がいつもよく話しかけてきて、俺一人が孤立するようなことはなかった。
この学園の高等部の生徒のほとんどは中等部からの進級組なので、高等部から受験して特待生として入った俺は、吉川が話しかけてこなければなかなかクラスに馴染めなかっただろう。
なんでも、「特待生と仲良くしておけば面白いことになる気がした」とのことらしい。
まったく、もの好きな奴もいたもんだ。
そんな風に、新しい環境に少しずつ慣れてきた頃の放課後、吉川はとあるイベントに俺を誘った。
「学園のアイドル?」
「そうそう! その人、中等部の頃からこの学園じゃ有名でさ、いつもすごいことやらかしてくれるんだよ!」
「すごいこと……ねぇ」
つまり……いわゆる問題児ってやつか?
「おまけに超美人!! そんな人がさ、今日、俺を缶ケリ大会に誘ってくれたんだよ」
「……缶ケリ?」
意味がわからんな。
学園のアイドルだろ?
学園のアイドルが……缶ケリ大会?
「彼女はとにかく楽しいことが好きだからな。このくそ広い学園の校庭で、各部活の猛者達を集めてのルール無用の缶ケリ大会!
俺もサッカー部のキック力をかわれて誘われたんだ」
ルール無用じゃ駄目だろ……。
入学してからなんとなく感じてはいたが……この学園の生徒達は、楽しいとか、面白いとか、そういったものを基準に動いている気がする。
学園全体として、お祭り好きな傾向があるようだ。
「へぇ~、そりゃよかったな」
正直、俺は学園のアイドルとかにはあまり興味がない。
俺ならたとえ誘われても、即パス宣言だな。
「ってことで幸人、お前も来るよな?」
「パス」
「何でだよっ!? 学園のアイドルだぞ!? 会ってみろって、絶対惚れるから。
なんたってミス端山学園コンテスト三連覇中だからな」
三連覇?
中一の頃から人気者ってことか。
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