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「そこまでだ! 夏目!」
今は、学園祭終了後の後夜祭。
日は傾き、西側が茜色に染まり始めた空の下、俺は、黙々と作業を続けていた夏目に話しかける。
「ふっふっふっ! 相変わらず仕事熱心ですな~、会長さん。
でもね、規則に縛られてちゃあ、祭りは楽しめないんだよっ!」
そう言って、夏目は立ち上がり、ライターを取り出す。
「私が持っているライターはこれ一つ。私はこれから、このライターで花火に火をつけます。
校則の番人、生徒会長さん。私を止めたければ、このライターを奪ってみなさい!」
なるほど、これが今回のバトルってわけか。
おもしろい!
「つまり、俺がライターを奪うか、後夜祭終了までここを守りきったら俺の勝ち。火をつけられ、花火が上がったら夏目の勝ちってことだな?」
当然、後夜祭終了までここに張り付いているとか、花火を撤去するなんて無粋な真似はしない。
勝つなら真正面から!
夏目のライターを奪い取る!
「そういうことっ! ……でも、その前に……」
夏目は頭上に指を構え、息を吸い込む。
そして───
───パチンッ
「いでよっ! 騎士団!!!」
いわゆる指パッチンの音と共に、召喚の呪文を唱える。
すると、それを見ていた野次馬の中の何人かが、すかさず携帯電話を取りだし、各々メールや電話を始めた。
────二分後。
グラウンドの真ん中に花火が設置され、その花火を挟むようにして俺と夏目が対峙し、その周りには数十人の男達がずらりと集結し、それを遠くから野次馬達が見守り、その更に遠くの特設ステージでは後夜祭のライブで生徒達が跳んだり歌ったりして盛り上がっているという、なんとも奇妙な光景ができあがっていた。
二分間で即座に集まってくる騎士団も凄いが、律儀に二分間待っていた俺も相当お人好しだな。
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