1.ヒト

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 そんな、メッセージ。  毎度のことだから、千尋もきっとわかってる。  いや、千尋だけじゃない。何人か……見覚えのある奴らが、そわそわしている。  あいつらは、もう知ってるんだ。  これからの、いつも年度初めにやる泥臭いショータイムを。  ――しっかり見てろよ、さっきジロジロ見てた奴ら。 「じゃあ………えっと、あれ?」  仲嶺が、早速おたおたし始める。  名簿を見て、閉じて、座席表を調べて、首を傾げて。 「あれ? あれ? あれー?」  皆のざわつきの中に一瞬、千尋の吹き出した声が聞こえて、内心ひやりとする。こら、千尋。我慢しろ。  そのうちに仲嶺が授業用の名簿を引っ張り出してきて、んもう、と唸る。 「誰よ、いきなりイタズラしてるの。えーと……」  そ こ で あ た し は 、  ス イ ッ チ を 切 る 。 「―――《秋谷 紀》、さん?」  
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