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那智さんの仕事場を軽く片付けて(締切明けで那智さんには気力がなかったそうだ)、あたしは帰ることにした。
那智さんの仕事場は小さなアパートの3階。あたしは階段を駆け降りる。
そういえばもうお昼だ。飯作ってやってないから、きっと姉貴が泣いている。
……何かうまいもんでも食べて、あたしも元気出さなきゃな。
そんなことを考えながら、アパートを出たとき――あたしは見付けた。小さな影が2つ。
………渚と、壱。
二人はあたしに気がつくと、やや固い声でゆっくりと言った。
「やっと見付けたよ、火影」
「です」
2人が厳しい目で見てる。
ああ……那智さんに会って、ずいぶん気持ちが落ち着いたのに。那智さんのロイヤルミルクティー、無駄にすんなよあたし。
気をつけて言葉を選ぶ。
「何? 千尋の報復?」
……全然選べてなかった。
渚と壱がふっと痛そうな顔をしたが、気付かないふりをする。
――駄目だ、また苛々してる。
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