1.ヒト

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 那智さんの仕事場を軽く片付けて(締切明けで那智さんには気力がなかったそうだ)、あたしは帰ることにした。  那智さんの仕事場は小さなアパートの3階。あたしは階段を駆け降りる。  そういえばもうお昼だ。飯作ってやってないから、きっと姉貴が泣いている。  ……何かうまいもんでも食べて、あたしも元気出さなきゃな。  そんなことを考えながら、アパートを出たとき――あたしは見付けた。小さな影が2つ。  ………渚と、壱。  二人はあたしに気がつくと、やや固い声でゆっくりと言った。 「やっと見付けたよ、火影」 「です」  2人が厳しい目で見てる。  ああ……那智さんに会って、ずいぶん気持ちが落ち着いたのに。那智さんのロイヤルミルクティー、無駄にすんなよあたし。  気をつけて言葉を選ぶ。 「何? 千尋の報復?」  ……全然選べてなかった。  渚と壱がふっと痛そうな顔をしたが、気付かないふりをする。  ――駄目だ、また苛々してる。  
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