1.ヒト

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 家に帰ると、姉貴は電話していた。  携帯じゃない……仕事の連絡じゃないのか?  姉貴はふとあたしを見て、困ったように笑った。 「今、帰ってきましたけど……はい。んじゃ、代わりますけど、絶対逆上させるようなこと言わないでくださいよ」  そう言って、あたしに受話器を突き出してくる。誰? 那智さん?  戸惑いつつも受話器を受け取り、耳にあてた。 「……もしもし?」 『おー、何だよ、可愛い声が出るんじゃん』 「………………………」 『……もしもし? 火影ちゃん?』 「…………あーっ!! てめっ、えーと……葛西、葛西雄大!?」 『忘れてたのかよ……泣くぞ俺』  電話の向こうは葛西……と、更に遠くできゃんきゃんと女の声。誰だっけ?  葛西の乾いた笑い声がする。 『えーと……その……ごめん。なんか………悪いこと言ったみたいで』  ―――――謝られた。  たぶん、あの馬鹿みたいな笑顔で。  あたしはすっと気持ちが冷めて、極めて冷徹に言った。 「別に。気にしてない。あんたの名前も覚えてないくらいだし?」 『いや……だから……。いいや、ちょっと待ってて』 「はあ?」  向こうでしばらく騒ぎ声。さっきの女――ああ、そうだ。仲嶺だ。  何なんだよ……。  すると、急にバタバタと移動する音がして、仲嶺の声がしなくなった。  
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