1.ヒト

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『……っと、よし。もう仲嶺先生いないから言うけど』 「んだよ。仲嶺に関係すんのか?」 『いや、まあ。で――お前、大丈夫?』 「何が」 『なんか……大丈夫かなあと思って』 「何だよそれ。わけわかんねえ」  あたしは逆に呆れてしまった。  でも、さっきの馬鹿みたいな笑い声じゃない。あの、真剣な顔のときと同じ――。  はあ。  あたしは顔が歪むのをこらえて、言う。  この声には……弱い。 「大丈夫だ」 『………』 「大丈夫だっつの」 『………』 「なんとか言えコラ!」  すると、ふっと息の音がした。  そして――優しい、声。 『明日、昼休み……屋上に来い』 「は?」 『屋上。お前、気に入ったんだよ。また話したい』 「………はあ?」 『じゃ。絶対来いよ?またな』  ――がちゃん。  強引な約束を投げ付けられたまま、通話が切れた。  ……………はあ?  
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