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―――翌日。
あたしは朝から屋上にいた。
千尋たちと顔を合わせたくなかったから、いつもより30分も早く家を出て……授業も出ずに屋上で、携帯をいじったり空を眺めて過ごす。
嗚呼、なんと不良っぽい生活。
あたしは、《なんちゃって》だけどな。
そのまんま昼休みを迎えて――チャイムの響きが消えてから42秒後、屋上の扉が開いた。
葛西雄大が、来た。
馬鹿みたいじゃないほうの、笑顔で。
「よお、火影ちゃん。なんだ、昼飯食いながら待ってようと思ってたのに」
「おう、葛西」
「何で生徒がちゃん付けで教師が呼び捨てなんだよ」
「いいじゃねえか、てめえも呼び捨てにすれば」
「ははっ。それもそうか」
くだらない会話。
あたしが行きに買ってきたパンを取り出す。葛西も葛西で弁当包を持っている。彼女の手作りかよ。まあな。食わせろ。誰がやるか。そんな――実にくだらない会話。
弁当箱を覗き込むと、彩り豊かな料理がいっぱいに詰め込まれていた。料理上手なんだな、彼女――仲嶺。
つか、
「何であたしと昼飯食うんだよ。彼女はいいのか?」
「何のことだよ……いや、うん。秘密だからね。頼むよ」
「おう。口止め料はその唐揚げで」
「やんねえっつの」
「あー、卵焼きもいいなあ。弁当ごと交換しねえ?」
「だからやんねえってば!」
「ふはは」
あたしが声だけで笑うと、葛西が鋭い顔で見てきた。あたしは言う。
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