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「さて、まずは仲嶺先生、火影は、まあ今のところ大丈夫なようです。ご家族――ご家族の方に連絡は俺がしますから、こういった事があった、くらい把握しといてください。火影のプライバシーを侵害しない程度のご説明はしますので、後ほど。あと、たぶん心配だろうから来て頂いたお三方には……どうしよう? 火影になんか喋ってく?」
「むぐっ! はふ、むぎーっ!」
とりあえず手を離せーっ! と訴えてみるも、
「ちょ、息がくすぐったいって。もうちょっとだけ我慢な」
呆気なく却下された。くそ、あいつらとは気まずいってーのに。
しかし、揃って泣きそうな顔の3人は、そろそろとあたしに近づいてきた。
みんな……すげえ、心配したんだろうな。
「火影……。千尋だよ、わかる?」
「うち、渚! 心配したんだよっ!?」
「壱……壱です。よかったです、気がついて」
「……………はふう」
返事ができないんですけど。
あたしがなんとか首を振って応えると、葛西が目で合図して、仲嶺に促されるように3人が……いや、一緒に仲嶺も出ていった。
あたしは、ただひとり残った葛西を見上げた。
葛西だけ残ったのは――
「……あたし、何言ったんだ?」
――それを、説明してくれるからだろ?
しかし、葛西は首を振った。
「たぶん……俺が聞いたらいけないことだった。と、俺は、思います」
「…………そう、か」
そうだろうな、とは思う。
今までだってそうだったんだから。
でもな、葛西。
あたしはそれから、逃げてきたんだよ。
ずっと、ずっと。
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