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よく晴れた朝。
久し振りの、通学路。
「――――火影?」
「おお。千尋」
あたしは後ろから駆けてきた千尋に、目線だけで振り返る。
鳴海千尋。あたしの親友、もとい相棒。茶色がかったセミロングと、たれがちな眼が可愛い女の子。
ただ、本当にいい子だからこそ、つるむのには少し真面目すぎるのが難点だ。
現に、千尋はあたしの姿を見た途端、真っ青な顔で怒鳴り出した。
「火影! その格好……!?」
「あ、いや、まあ……ちょっと」
「ちょっとじゃないよ! また制服ぼろっぼろにして! 何やってたの!?」
「………」
あたしは反論せずに自分の服を見た。
ブレザーのボタンはほとんど無いし、裾はよれよれだし、スカートはずるっずる。
確かに、ザ・優等生な千尋のように、ぴしっとした格好じゃないけど……。
「そんなに酷いか? これ」
「はあ……まったく」
千尋は溜め息をつきながら、あたしへ歩み寄ってきた。
「また派手に暴れたの? それとも何か意図があって?」
「どっちかってーと後者かな。なんか、ぴしーっと綺麗なのに苛立って」
「完全に前者じゃないの……ほら、髪くらい整えてあげるから。ゴム出して」
「ん。頼む。姉貴がいないから、結んでもらえなくてさ」
あたしは真っ赤なゴムを出して千尋に渡す。鞄を抱え直して、千尋があたしに手をのばしてきた。くすぐったい感触を我慢しながら、結び終わるのを待つ。
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