1.ヒト

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 クラスに行くと、教室中の生徒があたしを見る。いや、被害妄想かもしれないけど。  ……でも、きっと今、あたし、最凶に目つき悪い。だって隣の千尋が引いてる。  そりゃ、こんなあからさまに不良な格好してる女と、真面目な優等生が並んでたら、目立つよな……。  ま、移動中も散々視線感じたし、いつもだってそうだから、もう慣れた。  やることやって、後は寝る。 「千尋、頼んだ」 「はいはい」  いつものことだから、と千尋は二つ返事で頼まれてくれた。  教卓の上にある名簿に細工する千尋をぼーっと眺める。皆の視線が更に刺さるけど知ったこっちゃない。ああ、イイ子の千尋に嫌なイメージが付くかなあ――なんて他人の心配をする。  すぐに千尋は戻ってきた。 「クラス名簿も座席表も、完璧に《火影》にしておきましたよ、お代官様」 「苦しゅうない、近う寄れ」  ちょっと乗ってみた。似合うな、あたし。  あはは、と笑う千尋を、あたしはいつもの仏頂面で見ていた。  一緒に笑えたらいいのに。あしは舌打ちを堪える。  これ以外の表情は、もう、失くしたんだ。  すると千尋は、誰に似たのか、悪い顔で微笑んだ。 「じゃあさ――いつものアレ、いっときますか」 「おぬしも悪よのう……だから誰に似たんだよ、その顔」 「お代官様ほどでは……自覚ないの? あんた以外に誰がいるのよ」  
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