29人が本棚に入れています
本棚に追加
クラスに行くと、教室中の生徒があたしを見る。いや、被害妄想かもしれないけど。
……でも、きっと今、あたし、最凶に目つき悪い。だって隣の千尋が引いてる。
そりゃ、こんなあからさまに不良な格好してる女と、真面目な優等生が並んでたら、目立つよな……。
ま、移動中も散々視線感じたし、いつもだってそうだから、もう慣れた。
やることやって、後は寝る。
「千尋、頼んだ」
「はいはい」
いつものことだから、と千尋は二つ返事で頼まれてくれた。
教卓の上にある名簿に細工する千尋をぼーっと眺める。皆の視線が更に刺さるけど知ったこっちゃない。ああ、イイ子の千尋に嫌なイメージが付くかなあ――なんて他人の心配をする。
すぐに千尋は戻ってきた。
「クラス名簿も座席表も、完璧に《火影》にしておきましたよ、お代官様」
「苦しゅうない、近う寄れ」
ちょっと乗ってみた。似合うな、あたし。
あはは、と笑う千尋を、あたしはいつもの仏頂面で見ていた。
一緒に笑えたらいいのに。あしは舌打ちを堪える。
これ以外の表情は、もう、失くしたんだ。
すると千尋は、誰に似たのか、悪い顔で微笑んだ。
「じゃあさ――いつものアレ、いっときますか」
「おぬしも悪よのう……だから誰に似たんだよ、その顔」
「お代官様ほどでは……自覚ないの? あんた以外に誰がいるのよ」
最初のコメントを投稿しよう!