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  「私の姉、ラジカル・レルカムヌは家から飛び出したっきり戻ってこなかったんです」 「別にいいんじゃないのか。すでに二十歳超えてるならさ」  歩幅を変えず、スピードも落とさずに歩く彼女の横からユウキは言葉をはさんだ。うつむいている彼女の顔はあまり見えない。 「十年前はこのリベルクーラ王都と北の都オルフレット王都で多少のいざこざがあったのを覚えてます? 歴史学上では沈黙の戦争という出来事ですけど」 「へえ、どんなことか知らんがそんなこともあったんだ」 「よくそんな間の抜けた返事ができますね」  初めて――ではないだろうが、眉間にしわを寄せはっきり怒った顔を見せるのは初めてだった。前を見据えて続ける。 「この王都の前の王とのいざこざがエスカレートして、ついに戦争突入か、と世間は騒ぎ始めたんです。オルフレット王都中はリベルクーラ王都を、はっきり言って敵視してました。そんな中、私の姉はこちらに移動してきたんですよ」 「うーむ」  腕組をしてユウキはうなずいた。そのせいで彼女のスピードに引けを取ってしまったが、なんとか追いついて話に戻る。 「そりゃ、確かに大変なことだわな」 「ですから、そんな間の抜けた……」  と、彼女は言葉を止めた。体ごと右に向け、その正面を見据えて黙る。  
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