‡プロローグ‡

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 そのため、ユウは、半ば吹っ飛ばされるようにして、畳の上に倒れ込んだ。  唇の端から血が滲み、鼻血まで出ている。  ユウの瞳からは、大粒の涙が零れ出した。  だが、声に出しては泣かない。  男の様子に、怯えきっているようだ。  そんな二人の様子を、裕紀(ヒロキ)はじっと押し黙ったまま見詰めていた。  裕紀は、もうすぐ、小学校にあがる。ユウのほうは、一つ年上だった。  男の剣幕に、裕紀もユウと同じように、怯えていた。
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