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-大和国・スズラン家-
「……」
何をするわけでも無く、スズランは自分の部屋のベッドで寝転がっていた。
涙は出ない。
もう全て出し尽くしてしまったかのように瞳は渇いている。
家中を包む静寂…声や音が聞こえてくるはずのリビングやキッチンからは何も聞こえてこなかった。
いっそ血痕でもあったら家族の死を実感できただろうに…荒らされた様子は無く、家はとても綺麗なままで、怖いくらいにそのままだった。
だからまだ帰ってくるような、あるはずの無い希望が心の中でほんの少し芽生えたりしていて…
スズランは帰宅を知らせる玄関の音と、『ただいま』という声を待ち続けていた…
「何やってるんだろ…私…」
本当に待っているわけでは無い。
そんな幸せを願う希望が叶ったら、と少し夢を見ていたのだ。
「はぁ…」
ため息をつきながら横目でベッドに置かれたスターズを見る。
「駄目だな…私…」
その言葉を最後にスズランは眠りについた。
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